寂聴さんは一貫して、世間からバッシングされた人の味方になってきた。

「青春は恋と革命」と語り、連合赤軍事件の永田洋子元死刑囚(故人)や元日本赤軍リーダーの重信房子受刑者とも手紙でやりとりを続けた。2016年には「STAP細胞」で一躍有名になったものの、論文の不正で批判された小保方晴子さんと雑誌で対談したこともある。

 本誌でも、ライブドア事件で有罪になった堀江貴文さんと13年に対談。そのときも堀江さんに「私はあなたが悪かったとは思ってないの」と励ました。一方で二人は、原発問題で激しく対立。「あなたの原発論にはぜんぜん賛成できない。(中略)幽霊になって原発賛成のホリエモンに取り憑いてやる」とヒートアップする寂聴さんに、同席した編集者も肝を冷やしたが、それでも最後には、二人は打ち解けた。堀江さんは寂聴さんの訃報を受け、自身のYouTubeチャンネルで当時の思い出をこう話した。

「原発問題で反論すると、瀬戸内さんは『私が今から意見を変えることはできないけど、堀江さんの言っていることはわかりました』と理解していただいたんです。とても柔軟な方でした。寂聴さんの生き方に批判的な人もいますが、功績のほうが大きかったと思います」

田中康夫さん
田中康夫さん

 00年の長野県知事選に当選した作家の田中康夫さんには、政治家になることを勧めた。阪神・淡路大震災の際に、田中さんがボランティア活動に積極的に参加していたことを知っていたからだ。寂聴さんが、田中さんに頼まれて長野県のアドバイザーになりかけたこともある。田中さんは言う。

「県知事になったとき、寂聴さんを含めた数人の方に県内で講演をしてもらおうと思って、謝礼は少なかったけどアドバイザーになってもらおうと考えたんです。結局は、県議会で否決されて実現できなかったのが苦い思い出です。寂聴さんは、会うたびに『もっと痩せなさい』と言われていましたが、私が批判されてもいつも応援してくれていました」

(本誌・西岡千史、大谷百合絵、菊地武顕、鈴木裕也、直木詩帆)

週刊朝日  2021年11月26日号より抜粋

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