京都 濱登久「個食おせち」三客 1万6200円(写真提供:松屋)
京都 濱登久「個食おせち」三客 1万6200円(写真提供:松屋)

■仮面ライダーのおせちも

 ちなみに、松屋の場合、今年販売されたおせちの平均単価は2万9000円弱(10月末時点)で、例年とほぼ同じ。高島屋も平均単価に特に変動はないという。

 つまり、高額商品が売れていると同時に、お手ごろ価格のおせちも売り上げを伸ばしているのだ。

 なかでも大きく売り上げを伸ばしているのが取り分け不要の1人前の商品、「個食のおせち」で、1人前2セットで1~2万円台。

「昨年のコロナ禍からものすごく出るようになって、売り上げは倍くらい伸びています」(山下さん)

 松屋も個食のおせちの売り上げは前年比約208%の伸びとなった。

 他にも、さまざまな新商品が開発されている。

 例えば、仮面ライダーの絵柄が目を引く「家族三世代おせち」。お重のふたには懐かしい仮面ライダー1号から令和ライダーまで勢ぞろい。

「毎年、新作が出るんですよ。おじいちゃんおばあちゃんが、里帰りをするお孫さんのために、語らいのきっかけになれば、というコンセプトで始めました」(山下さん)

 地震で被災した地域をおせちで盛り上げようと、地元企業と共同で開発した「仙台藩 伊達政宗公お好み 鍾景閣おせち」や、くまモンの絵柄をデザインした「本おせち」もある。

「高島屋 家族三世代おせち」和・洋中・おこさま 三段重 2万9160円(写真提供:高島屋)
「高島屋 家族三世代おせち」和・洋中・おこさま 三段重 2万9160円(写真提供:高島屋)

■大きく売れるのはこれから

 近年、苦境にある百貨店業界だが、おせちに関しては右肩上がりに市場が拡大してきたという。

 その理由として、山下さんは高齢化や女性の社会進出を挙げる。

「昔は、おせち料理は『家で作るもの』でしたが、いまでは『買うもの』という意識が幅広い世代の方に浸透している感触があります。弊社の場合、2000年以降はずっと5%前後の売り上げの伸びを続けています」

 そして、売れ筋である2万円を中心とした価格帯の商品が動き始めるのはこの時期からだという。

「ボリュームゾーンのおせちが売れるのはこれからです。今月下旬くらいから『そろそろおせち料理を買おうか』というお客さまが一気に動き始めます」(山下さん)

 今年はちょっと贅沢に、おせちにお金をかけてみるのもいいのでは。

(AERAdot.編集部・米倉昭仁)

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