コロナ禍で厳しい経営が続く百貨店業界だが、「巣ごもり需要」の高まりで、正月に向けたおせち商戦が熱を帯びている。なかでも目を引くのが「高額おせち」の充実で、松屋は40万円の洋風おせちを投入。業界一のおせちの品ぞろえを誇る高島屋も高額商品のラインアップを強化。10万円以上のおせち、約30種類を用意しておせち商戦を迎える。
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「昨年は、おせち商戦が始まった瞬間からすごい勢いで注文が入りました。最終的な売り上げの伸びは前年比約140%。歴代おせち商戦のレコードでございました。本年も非常にいいペースできております」
松屋でおせち料理を担当する前川悠課長は顔をほころばせる。
新型コロナの影響で、正月を自宅で過ごす「巣ごもり需要」が高まり、おせちの販売は増えると想定していたが、それをはるかに超える注文が入った。
高島屋食品部のバイヤー、山下聡次長も昨年のおせち商戦をこう振り返る。
「12月14日にGoToトラベルキャンペーンの一時停止が発表された直後の売り上げの伸びが顕著でした。『今年は旅行に行けない、帰省も難しい』と考えたお客さまが一気におせちに流れ込んだと思われます」
同社は約1150種類ものおせち商品をそろえたが、「お客さまが殺到して、最終的に2アイテムを残して、全部、売り切れてしまったんです。それくらい、正月をご自宅で過ごされる傾向が顕著に表れた」(山下さん)
高島屋のおせちの売り上げも前年比約120%と、大きく伸びた。
■現実離れした価格ではない
おせち商品全体の売り上げも好調だったことに加えて、「高額のおせちの反応が非常によかった」と、前川さんは言う。
それを受けて松屋は今年、新規商品として40万円のおせち「銀座ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」を用意した。
「ブルガリさんに期待したのはラグジュアリー感ですね。前菜からデザートまで、イタリアンレストランのフルコースが詰まった感じを出しながら、おせちに仕立てました。もちろん、材料や調理にはものすごくこだわっています。50年熟成のバルサミコ、希少なオシェトラ種のチョウザメのキャビア、黒トリュフを添えたとびっきり大きなホタテガイの貝柱など、とても貴重な食材を組み合わせています」(前川さん)
しかし、これほど高額なおせちに需要はあるのだろうか。