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■日帰りも可能な血管内治療が普及
血管内治療は局所麻酔で、日帰りが可能。2011年に保険適用となってから、一気に普及した。
都内に住む60代の女性も広川医師のクリニックで、この治療を受けた。10年以上前に下肢静脈瘤と診断されたが、ストリッピング手術が必要と言われ、治療をあきらめてきた。
しかし、血管内治療が保険適用になったことを知り、思い切って受診したのだ。
「長い年月を経て、静脈瘤が悪化し、足の重だるさや湿疹によるかゆみがひどくなっていました。治療後は『長年の悩みが解消された』と、とても喜んでおられました」(同)
血管内治療は、レーザーや高周波電流の熱により、血管の内側から下肢静脈瘤の原因となっている静脈を焼いてふさぐものだ。患者数が最も多い大伏在静脈瘤が主な治療対象となる。大伏在静脈瘤は太もも内側にある弁が足のつけ根から壊れて、血液が逆流している。そこでひざの内側から細いカテーテルを静脈に入れ、足のつけ根に送り込む。次に治療対象の静脈に沿って局所麻酔をおこない、カテーテルを手前に引きながら静脈を焼いていく。
焼いた静脈は治療後約半年でからだに吸収される。表在静脈が担う足の血流は約15%。焼かれる静脈はもともと正常の機能を失っており、なくなっても問題はない。血流は他の静脈で補われる。
なお、ふくらはぎの目立つ静脈瘤は曲がりくねっていて、カテーテルが通らないので焼灼はおこなわないことが多い。
通常は1~2ミリの小さな傷からこの静脈瘤を切除する「スタブ・アバルジョン法」を同時におこなう。
切除しないで後日、追加治療をおこなう場合もある。「フォーム硬化療法」という方法で、静脈瘤に泡状の薬を注射して血管を固める。
■血管を焼かない治療も登場
19年には医療用の瞬間接着剤(シアノアクリレート系接着剤)で静脈を固める「グルー治療」が保険適用になった。
「グルー(glue)は糊という意味。主成分のシアノアクリレートは市販の瞬間接着剤に入っているものと基本的に同じ成分。血管に入れると血液と反応してすぐに固まり、静脈をふさぎます。従来の血管内治療と異なり、血管を焼かないため、熱による合併症が起こりません。また、治療後に弾性ストッキングをはく必要もありません」(同)