「例年は毎週数十人、1シーズンで数百人の感染者が受診しますが、昨シーズンは1~2人でした。今年もそうなってほしいですが、流行しなかった分だけ、社会全体の免疫が下がっていると考えられるのが懸念材料です」
受診した人以外にも、感染しても症状が表れない人がいる。要するに、例年ならインフルに感染、受診した人を上回る人がウイルスに曝露されることで免疫が強化される現象が起こっているが、去年は「流行ナシ」だったために、多くの人の免疫が下がっている可能性が高いというのだ。
インフルは主に「A香港型」「B型」など4種あり、毎年入れ替わるように流行してきたが、「それは抗体が弱まった型のインフルが交代で流行しているから。現場の実感としては19年シーズンも流行は小規模だったので、2年間免疫が休んでいる人も多く、いったん流行すればかかりやすい状態になっている」(久住医師)という。
また近藤院長は、今夏に大流行した小児のRSウイルス感染症の例を引き合いに出した。
「昨年はまったく流行せず、前年比で9割減だったのに、今年は過去数年で一番の感染者が出てしまった。これも流行しなかったために免疫が弱まっていたからという指摘がある」
特に注意が必要なのは、インフルエンザ脳症など重症化リスクが高いとされる5歳未満の小児で、両医師とも「ぜひワクチン接種をしてほしい」と訴えた。
だが、そのインフルワクチン接種が思うように進んでいない現状がある。
「例年ならインフルエンザのワクチン接種は10月から12月ごろですが、今年は入荷が遅れ気味で、接種時期が後ろにずれこんでいます」(久住医師)
厚労省は9月、インフルのワクチンについて「今シーズンの供給が遅れる」との通知を各都道府県に出した。理由は新型コロナワクチンだ。ワクチン製造に使う部品などが新型コロナ用に使われ、インフル用のものについて確保が難しくなっていたのだ。