「子供たちの間で、12月以降は普通の風邪がはやる時期になります。風邪がはやっている中で病院に行き、2回に分けてインフルエンザワクチンの接種をするだけでも子供にとっては感染のリスクとなる」(久住医師)
新型コロナのワクチン接種もインフルのワクチン接種の遅れと関係している。国の大号令もあって、コロナのワクチン接種は11月になっても続くが、「インフルワクチンを打つためには、コロナワクチン接種から2週間空けないといけないので、インフルワクチンの接種も遅れ気味になっている可能性があります」(近藤院長)
コロナワクチンの「ブースター接種」がこれから始まると、インフルのワクチン接種はさらに遅れる可能性がある。
「欧米ではコロナとインフルのワクチンの同時接種をしているところもありますが、日本ではできません。そうこうしているうちに正月で人が動き、ウイルスがシャッフルされるリスクも出てくる」(久住医師)
空港で水際対策が緩和されたのも懸念材料だ。
毎年のインフル流行の目安とされる、オーストラリアなど南半球では流行していないとはいえ、インドやバングラデシュといった亜熱帯では小流行が伝えられている。欧州クロアチアでもA香港型が小流行するなど、決して楽観はできない。
近藤院長は「最悪のケースは新型コロナの第6波とインフルの同時流行で、外来診療の現場は混乱し、ひっ迫も深刻になる」と言う。
両者の症状は似ているので、検査ひとつとっても、診断するには抗原検査でコロナなのかインフルなのか鑑別する必要があり、外来診療の負荷は強まる。仮に新型コロナとインフルに同時感染した場合、それぞれの単独感染よりも肺炎の重症化と回復の遅れにつながる可能性がある、との長崎大学の研究もある。
「同時流行を抑える特別な手段はありません。これまでどおり3密を避け、マスクや手洗い、うがいなどの予防対策を続けることと、ワクチン接種しかありません。お子さんは保育園や家庭での感染が多くなるので、大人が予防してあげるしかありません」(近藤院長)
油断大敵。コロナ対策だけでなく、インフルへの注意も怠りなく!(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2021年12月3日号