●子どもには新型コロナより感染症が脅威

 例年、子どもたちの間で流行りながらも、昨年感染者が大きく増えなかった病気は他にもある。インフルエンザや手足口病、プール熱(咽頭結膜熱)、ヘルパンギーナなどだ。

 手足口病、ヘルパンギーナは主に夏に流行する感染症だが、冬にさしかかる今の時期に、一部の地域で感染拡大が確認されている。日本小児感染症学会理事長などを務める長崎大の森内浩幸教授(小児科学)は、

「子どもにとっては、新型コロナよりもインフルやRSウイルスなど感染症のほうが命や身体に影響を与えるリスクが高い」

 と指摘する。

 手足口病は、大抵の場合は数日間で治る病気だが、一定の割合で脳炎や心筋炎など重い合併症を引き起こすと知られている。爪が剥がれ落ちることもある。ヘルパンギーナは39度以上の高熱が出ると同時に、のどが腫れ、小さな水疱ができる。のどの痛みが強く、食べものや飲みものを受け付けなくなり、小さな子どもは脱水症状を起こすこともある。

 また、爆発的な感染で懸念されるのは、医療ひっ迫だ。重症化した場合には、酸素吸入や小児用の集中治療室などで治療を受ける必要がある。しかし、例年以上に感染が拡大し、重症者も増えれば、治療用の機器やベッドは埋まり、必要な治療を受けることができないこともあり得る。今年、RSウイルスが流行った際には、小児科のベッドが埋まり、普段であれば入院が必要な子どもでも、入院ができない例があった。

 対策はどうすればいいのか。森内教授はこう指摘する。

「対策の基本は、流行の爆発を防いだり、そのスピードを緩くしたりすることです。そうしないと適切な治療を受けることができず、救える命も救えなくなることにつながりかねない。流行りそうな気配があるときには、改めてマスクや手洗い、消毒をしっかりとする、症状があるときには保育園には預けないなど個人や組織でもしっかりと対策をする必要がある。インフルエンザなどワクチンのある感染症は、予防接種しておくといいです」

 今年は新型コロナの感染者数以外にも注視したい。

(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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