国民民主と親和性高い
突然の枝野氏の引責辞任。4人の中で唯一「代表になるプラン」が具体的にあるのは、代表選立候補2回目で立憲の政調会長の泉氏だけかもしれない。「所得税の最高税率引き上げ、将来の総合課税化を見据えた金融所得課税の強化、社会保険料の月額上限の見直しなどによる富裕層への応分の負担」「党幹部の半数を女性にする」など他の3人との「違い」を明確にする。陣営で脇を固めるのはソフトバンク社長室にいたことがある荒井優氏だ。同世代の若手起業家や経済人からの支持も厚い。ただ旧立憲の議員や支持者の間から警戒感もある。
「希望の党再び、となる可能性がある。旧立憲と現国民と、どちらと親和性が高いかといえば後者。本人は維新や国民との連携は否定しているが、手放しに支持はできない」(旧立憲所属のベテラン議員)
4人のうち「化ける」可能性がある伏兵が小川氏だろう。小川氏の立ち位置は、右に泉氏、左に逢坂、西村の両氏。まさに中道ど真ん中だ。「永田町の論理」に背を向け続けてきた小川氏は、徹底して「有権者との対話」にこだわる。他の候補が国会議員、地方議員への電話かけなど党内の支持固めに総力を注ぐ中、小川氏の姿は街頭にあった。「青空対話集会」と名付けられた街頭集会。その場所は、17年の結党時、枝野氏が第一声に選んだ東京・有楽町だった。小川氏は自らの主張以上に、集まった観衆からの質問への応答に時間を割く。中には容赦ない批判もある。それでも、時間が許す限り、膝を折り、質問者の目線に立って答える。
ある自民党ベテラン議員は、他党のことなので言及は避けるとしながらも「本人がオウンゴールさえしなければ」と前置きした上で「やりにくいのは小川」と笑う。
代表になる野心あるか
そしてこう続ける。「政策で勝負するのはたやすい。ただ理念や理想を高らかに語られると自民党は弱い。何しろ政治の言葉の貧しさが露呈したのが安倍・菅政権。岸田さんだって熱く理想を語れるかといえばそうではない。小川氏のような青臭く、熱く、切ないほどの真っすぐな理想論が、自民党以上に有権者の気持ちの受け皿になる可能性はある」
とはいえ党の三役すら経験したことのない小川氏に、立候補の覚悟があっても、自らが代表になる本当の政治的野心があるかは正直、分からないと同僚議員の一人は語る。
代表選は30日。確実に決選投票にもつれ込むと予想される。誰になろうと参議院選挙まで8カ月しかない。野党第1党を死守できるかどうか。次期代表に課された責任はとてつもなく大きい。(編集部・中原一歩)
※AERA 2021年12月6日号