「通販関連のCMは去年から増えています」と言うのは、テレビ通販を中心としたダイレクトマーケティングを支援する「トライステージ」の前田充章副社長だ。

「新型コロナウイルス感染症の拡大で経済が止まり、大手企業がテレビCMの出稿量を減らしたことが背景にあります。テレビCMの枠が余り、各局がCM枠の価格を下げて売り出した。そのため、これまでより低価格でスポットCMが打てるようになったのです」

 これまでは高価でコストが合わなかったCM出稿価格が下がったため、通販企業にとっても、コストに見合う反応が期待できる価格になったというわけだ。

「実際に、この時期はこれまでテレビCMを出したことのない中小メーカーから、通常の倍近い問い合わせを受けました。外出自粛で店頭での販売が落ち込んだため、テレビCMを介して売りたいという方々からの相談でした」(前田氏)

 だが、結果的には多くの中小企業がCMを流すのをあきらめたという。ネックはやはり費用の問題。放送枠が安くなったとはいえ、CMの制作費などにそれなりのコストがかかる。そのなかで特に健康食品や医療関係のCMが増えたのは、コロナの影響だという。

「去年前半はコロナ禍での健康意識の高まりや巣ごもり生活の影響で、健康食品や医薬品の通販CMの販売効率が上がりました。健康食品や医薬品は継続購入が見込めるのでもともとテレビ通販と相性が良い商材ですが、普段よりも安価な放送枠で注文が獲得しやすい状況でした。食品やダイエット関連、ホームメンテナンス関係の通販も好調でした」(同)

 では、このコロナ禍で通販CMはどのくらいオンエアされ、商品はどれだけ売れたのだろうか。

 先の「しじみ習慣」の自然食研、「十六種類の野菜」や「乳酸菌が入った青汁」の世田谷自然食品、ひざ・腰・肩の痛みに効くという「リョウシンJV錠」の富山常備薬(富山)など、数多くのテレビCMを出していた企業に聞いてみたものの、みな「コメントできません」「取材はご遠慮しています」と内実を明かしてはもらえなかった。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年12月10日号より抜粋

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