2年半に及ぶコロナ禍は、若者の活動が大きく制限された期間でもある。大学生の内定率が落ちたり、採用を取りやめる企業があったりと、学生や新社会人に影響が出た。リモート元年とも呼ばれた2020年は、多くの企業がテレワークを導入。これまで対面で行っていた入社式や新人研修がオンライン化したことで、新入社員と社会の距離感は従来とは大きく変化した。
だが、その制限を受けながらも「転換力」を武器にフィールドを広げたZ世代がいる。週刊誌AERAでは、そんな若者たちを追った。
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これだと思ったことに、まっすぐ突き進む性分だ。
「豊かな社会を作りたいというのが、人生のテーマにあるんです」
やわらかな物腰ながら、はっきりとそう言い切るのは、富士茜音さんだ。25歳の若さながら、ホテル予約サービス「Otell(オーテル)」の事業責任者を務めている。
富士さんは2020年3月に神戸大学経営学部を卒業。その後上京し、ソーシャルメディア事業を行うIT企業「ガイアックス」で、同世代を対象にした「洋服のサブスク」サービスを生み出したい──そう考えて入社した。
そこに襲いかかったのが、新型コロナの流行だった。状況が落ち着くまで実家のある関西からリモートで働くことになった。朝から晩まで、同僚と画面をオフにしたままZoomをつなぎっぱなしにしたことで、コミュニケーションや仕事に不便はなかったというが、
「コロナのことを最初に知ったときは、正直マイナスな気持ちでした」
と当時を振り返る。
「でも、ゲームチェンジが起きるとも思って。今だからこそ必要な事業は何かという視点に切り替わったんです」
緊急事態宣言が発令され、街から人の姿が消えた20年4月のことだった。社会が大きく変わるなかで「コロナ」を軸にしたサービスを作りたいと考えるようになり、アパレルにこだわるのはやめた。
世の中には2種類の人
事業のアイデアが浮かんだら、リサーチをして、周りの同僚や上司と壁打ちを繰り返す。三つのサービスを経て、21年3月に生まれたのが、オーテルだった。
「社内にワーケーションをテーマに活動している人がいて、その人と話すなかで一緒に事業を立ち上げないかと盛り上がったんです」