店の宣伝は、デジタルとアナログを組み合わせた。インスタグラムやTikTokで同世代にアプローチしながら、近鉄奈良駅でビラ配りやポスティングもした。
西さんが在籍する近畿大学といえば、「マグロ大学」として売り出すなど突き抜けた広報力が注目されている。「すするか、すすらんか。」が話題を呼んだのは、日頃からそのPRの凄さを体感していたことのたまものなのか。
「そのあたりに関しての知識は全然なくて。そもそも、宣伝を始めたのも店をオープンしてからなんです。普通は先にチラシを配っておいたほうが効率いいじゃないですか。僕らはプロモーションのこともよく知らなかったんです」
西さんを見ていると、やる前に考えるのでも、やりながら考えるでもない。口癖の通り、「やるか、やらんか」の2択だから、やってからどうするかを考える。
「最初は何でラーメンをやっているかも、わかっていなかったんです。でも、人の心を動かすのが好きやなってのはずっと昔からあった」
ラーメンを提供することで、食べた人の心を動かすことはできる。だが、半年ほど経った頃から、もう少し具体的にビジョンを持ちたいと思うようになると、ここでも「やるか」を発揮。伝手をたどり、奈良の地で江戸時代から続く老舗「中川政七商店」の会長にメールで連絡したのがきっかけでノウハウを学べることになり、22年4月には株式会社「やるかやらんか」を創業。若者が「直接的に人生の選択肢を見いだせる環境をつくる」ことを目指す。
「極端な話ラーメン屋じゃなくてもいいんです。でも、結局、やるしかない」
「変化」を生きるZ世代
コロナ禍が育てたZ世代のたくましさは、就活状況にも現れている。
91.2→81.2→85.3→87.8。
この数字は、リクルートによる過去4年間(20、21、22、23年卒)の大学生(大学院生除く)の8月1日時点(各年)の内定率だ。新型コロナの影響を受ける前の20年と翌年とでは、内定率は10%減。感染拡大により、旅行会社や航空会社が採用を取りやめるなど、波乱が続いた。
だが、西さんのようにコロナ禍を逆手に取って新しいことに挑戦したり、富士さんのように次々に発想を転換してビジネスを生み出したりと、若者たちは転換力を武器に変化の時代に立ち向かっている。コロナ禍3年目となる今年は、ANAやJALなどのエアラインも採用を再開。就活戦線「異状あり」も、少しずつ回復の兆しが見えている。
(AERA編集部・福井しほ)
※この記事はAERA dot.とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。