この処分理由や調査結果には、疑問が尽きない。
会社が政治活動をしているという「誤解」とは、だれがどの段階でだれに抱かせたものなのか。日本郵便の社会的評価を毀損させたのは、「指示」だけのせいなのか。そして何よりも、郵便局長のなかでも大幹部である統括局長たちが、政治活動と会社業務を区別できていなかったということが本当にあったのだろうか。
少なくとも筆者が取材を重ねてきた局長たちの間では、会社業務と政治活動の「区別」は常識中の常識である。約20年前の官営時代に、選挙違反で郵便局長が多数逮捕された苦い歴史もある。民営化で政治活動が認められたとはいえ、業務と政治の線引きは新人研修でもたたき込まれる鉄則で、局長会活動の折々で気を遣う場面が見て取れる。
実際、今回のカレンダー配布の指示は、業務と政治の線引きを明確に意識したうえで、「政治活動」として行うよう厳命が出ていた例が多い。
「休日に局長がペア(2人組)で配れ」という指示内容が典型だ。一方、一部の局長会では、「カレンダー配布は業務だから、業務時間中に配ってもよい」という指示が出ていた地域もある。こちらも業務と政治の線引きが意識されていた点では変わらない。
日本郵便による事実認定は、一連の不適切な指示が「うっかりミス」だったと評価しているように読める。業務と政治活動の区別をしていたかどうかというモノサシ自体が、「うっかりミス」を前提にしたもので、これではカレンダー配布の実態は解明できない。経費で買ったカレンダーを政治活動の一環で配った「目的」や「動機」を明らかにしなければ、問題の核心に迫れず、根本的な改善策を期待することも難しくなる。
支援者らへのカレンダー配布の目的は、2022年の参院選に向けて立ち上げる予定だった後援会への入会に役立てることだったのではないのか。本来なら局長会が自ら負担すべき費用を、日本郵便の経費でまかなおうと安易に考えた結果の指示ではないのか。