記者会見する日本郵政の増田寛也社長(撮影・藤田知也)
記者会見する日本郵政の増田寛也社長(撮影・藤田知也)
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 日本郵政グループの「悪いクセ」が顔をのぞかせている。多くの郵便局長が経費で買ったカレンダーを政治流用した疑惑で、日本郵便が公表した調査結果のことだ。問題の早期収拾を急ぐあまり、実態を直視できなくなっている恐れがある。 

【画像】筆者が入手した局長会の内部資料はこちら

 郵便局長のカレンダー配布をめぐる疑惑は、西日本新聞が10月9日付朝刊で狼煙を上げ、朝日新聞があとに続いた。西日本は2019年末のカレンダー配布に着目し、同年夏に再選された自民党参院議員の後援会会員らに配ったことを問題視。朝日は2020年末のカレンダー配布で、次の参院選の支援者や支援者となりそうな人に配られたことに焦点を当て、物品経費の流用に加え、顧客が政治活動の標的になっていた恐れがあると指摘してきた。

 こうした報道を受けて、日本郵便は調査を開始。その結果が11月26日に公表されたのだが、首をかしげざるを得ない内容となっている。

 結論を急いだ日本郵便の調査は、幹部である局長への聞き取りが中心だ。対象は約1千人で、856人の局長に加え、一般社員や局長会関係者も含まれる。

 示された調査結果では、カレンダーを政治活動などの支援者に配るよう求める指示が郵便局長会内で出ていた、と認定した。ここまでは朝日と西日本で報じられてきたとおりだ。

 だが、経費で購入されたカレンダーを政治活動という「別目的」で配るよう指示した行為について、日本郵便は「物品の目的外利用(不正流用)にはあたらない」と結論づけた。郵便局長会の支援者は郵便を使う「お客様」だという理屈を持ち出し、お客様に配るという本来の目的に沿っていないとまでは言えない、と導いてみせた。

 それで無罪放免になるのかと思いきや、さにあらず。

 日本郵便は、支援者への配布指示は、「会社として政治活動をしているかのような誤解を生じさせ、会社の社会的評価を低下・毀損する」とし、信用失墜行為にあたると認定。政治活動と会社業務をきちんと区別していた統括局長は処分対象外とする一方、区別ができていなかったという統括局長90人に懲戒処分を下した。

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疑問が尽きない調査結果