「英語ができるといっても、読み書きはできなかったし、単語や文法も子どもの頃の会話レベルで止まっていたんです。でも、発音だけはいいから“apple”と言うだけで、“おお~!”と驚かれてしまうんです(笑)。上級生に呼び出されて“英語でなんかゆってん(言ってみて)”と言われたり。目立つとイジめられるという不安もあったし、英語が話せていいと思えることはあまりなかったですね」
言葉に対する不安を抱えていた思春期の彼女を支えていたのは、やはり音楽。
「ずっと洋楽を聴いていたし、歌詞の意味もなんとなく聴き取れていました。ただ、難しい単語や表現は分からないから、ママが好きだったスティービー・ワンダーの『パートタイム・ラバー』を、大人になってから浮気の歌だったと知って驚いたり(笑)。マイケル・ジャクソンの『ヒール・ザ・ワールド』の歌詞などはわかりやすかったですね。マイケルの歌い方自体が“メッセージを伝えようとしているんだな”と」
■小学2年生レベルの英語で、単身L.Aへ
中学卒業後は、母親の後押しもあり、ロサンゼルスのアート系の高校に進学した。当然、英語は必要不可欠だが、入学前に受けた英語力のチェックは「小学校2年生レベル」。
「小さい頃に覚えた英語のままで止まっていたから、私としては“小2レベルなら、まあまあかな”と(笑)」と気楽に考えていた彼女は、入学後、英語の勉強に明け暮れることになる。
「高校ではダンスや歌などのレベルの高いレッスンが受けられたのですが、勉強もしっかりやらないとすぐにキックアウト(退学)されてしまう。日常会話はついていけたのですが、“おしべ”“分数”など単語がわからなかったので、めちゃくちゃ苦労しました。私はもともと“学校なんて意味ない。早く仕事したい”というタイプだったんですが(笑)、高校時代は先生や周りの人が勉強を見てくれたり、すごく協力してくれて。この人たちを裏切ったらバチが当たると思って、生まれて初めて勉強をがんばりました。卒業できたときはすごく嬉しかったし、あの経験がなければ、私は何にもチャレンジしない人間になっていたと思います」