私大の両雄として比較されることが多い早稲田大学と慶應義塾大学。校風の違いはどこにあるのか。AERA 2021年12月13日号で、両校の昔と今をよく知る慶應義塾大学大学院法務研究科・高田晴仁教授さんが振り返る。

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 昔話ですが、早慶の法学部に合格しました。当時、早稲田の偏差値のほうが高かったのと、キャンパスの雰囲気を気に入り早稲田に決めました。

 バブル前夜でしたが、学生運動の名残というかバンカラな雰囲気が少し残っていました。入学式で当時の学部長が「どうですか? ここは歌舞伎町の雑踏のようでしょう」「皆さん、一夜漬けはしてくださいね」とあいさつするくらい。全身にピンク色のペンキを塗った入学生もいました。

 私は入学早々、先輩に「法律の勉強はどうするんですか」と聞いたことがあります。あきれた様子で「あのな、自分で本を読むんだよ」と言われました。早稲田は「個」が強いのだと思います。勉強したければ自分で努力する。自分の進みたい人生に向かっていく気風がありました。

 慶應に進学した高校時代の同級生と会うと、早稲田とは違うなと思いました。早稲田の学生は高田馬場や新宿で焼き鳥にビール。学ランを着ている学生もいました。それに対して、慶應生の行動範囲は麻布や六本木、自由が丘。慶應の同級生に誘われた合コンは、イタリアンにワイン。おしゃれ度が違いました。

 非常勤で来ていた慶應の先生を慕って、慶應の大学院博士課程に入学しました。私の知る限り、当時早稲田から慶應に来たのは、私の1学年上の先輩1人だけ。教員も母校出身から選ぶ時代でした。

 あれから30年、慶應は今もあまり変わっていません。早稲田にたまに行くと、全体的にスマートになったように思います。女子学生が増えて、建物もきれいになって、垢ぬけたんじゃないでしょうか。

AERA 2021年12月13日号