
取材ではテンション上がりっぱなし。だが、その感動を正確に伝えることが、読者に東急の魅力を届けることにつながるという。そんな久野さん。今回の取材で熱望したのが、東急が駅ナカなどに展開する立ち食いそばの「しぶそば」だ。なぜ?
「何より、おいしいですから」
かくして本書を監修した鉄道好きで知られるホリプロ社員の南田裕介さんと共に、しぶそばの門を叩いた。しぶそばの制服に着替え、名物のかき揚げそばづくりに挑戦した。
「完成したかき揚げは、見た目は悪くなく、店長さんにも高く評価していただきました。だけど、食べた時の食感が違っていました」
サクッという、かき揚げの醍醐味の食感を出すことができなかったと振り返る。
東急の電車は、世田谷区や大田区など都内屈指の高級住宅地を走る。そのため久野さんは、東急はハイソで敷居が高いと感じていた。しかし取材を通し、考えを改めるに至った。リーズナブルな「しぶそば」が象徴するように、私たちの日常生活に寄り添ってくれる鉄道会社だと。
「同じように『東急って敷居が高いんでしょう』と思っている方に読んでいただき、鉄道を好きになってほしいです」
東急愛、そして何より、深い鉄道愛を感じた。(編集部・野村昌二)
※AERA 2022年11月7日号