AERA 2021年12月6日売り表紙に柳楽優弥さんが登場
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■自信のなさを重ねた

――撮影を行ったのは2020年。コロナ禍により、出演予定だった作品の撮影が相次いで延期となり、現場をほとんど経験することなく、「浅草キッド」のクランクインを迎えた。

柳楽:なんとなく掴めていたはずの現場での“勘”のようなものが鈍ってしまったと感じて、精神的にも自信を失っていた時期でした。そんな状況でも、タップや漫才といった、技術的にも高いレベルのものが求められる現場で、「これは自分との闘いだ」と。でも、ビートたけしさんの若い頃の心情とそうした自分の自信のなさを重ねてしまおう、という気持ちもありました。「なんとか乗り越えたい」と思っていた時期でした。

 不安な気持ちを抱いている一方で、ビートたけしさんではなく、映画監督としての北野武さん、北野作品のなかの武さんが放つちょっと怖い雰囲気を出していくことについては、不思議と自信もあったんです。

(街中で次々とケンカを仕掛けていく若者を演じた)映画「ディストラクション・ベイビーズ」(16年)の撮影に入る前、北野武監督の映画「その男、凶暴につき」を参考として何度も繰り返し観ていたからです。さらに「ディストラクション・ベイビーズ」が海外でも評価を得ることができたので、武さんが醸し出す雰囲気や狂気といったものは、この作品でも残すことができるのではないか、と。

 作品に対する評価は観てくださった方に委ねるしかないですが、自分のなかでは「闘った」という意識が強くて、しかも監督の手によって「勝てた」という気持ちになることができた。あくまで自分の中で、ではありますが「乗り越えることができたかな」と思える作品でした。これは最終的に自信につながったなと思います。

■家族を誘って観る

――手応えを得ることができたのは、一緒に初号試写を観た家族の反応が良かったことも大きいという。

柳楽:自分一人では、フラットな視線で作品を観ることができないので、いつも家族を誘って観るようにしています。嫌がられる時もありますけれど(笑)。自分にとっては、11歳の娘の反応が一番素直で信頼できるんです。面白ければ食い入るように観ますし、面白くなければすぐ飽きてしまいますからね。いろいろな映画や舞台を一緒に観に行っているのですが、たとえば是枝裕和監督の「万引き家族」も、純粋に面白いと感じたみたいです。

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