――「浅草キッド」では、大泉洋演じる深見との心の結びつき、そして深見のもとを離れ、一歩踏み出すまでの心の動きが丁寧に描かれる。柳楽にとって深見のような存在とは?
柳楽:映画デビュー作「誰も知らない」(04年)の是枝監督、舞台「海辺のカフカ」(12年)で主役を演じる機会をくださった故・蜷川幸雄さん、クリント・イーストウッド監督の作品をリメイクした映画「許されざる者」(13年)の李相日(リ サン イル)監督……。人生の節目節目で出会い、感謝している方はたくさんいます。蜷川さんは、一時期俳優の仕事を離れ、アルバイトをしていた20代の頃にオファーをしてくださった。ある日ディーラーのアルバイトを終え、帰宅すると脚本が届いていたんです。本当にありがたい、と思いました。
■世界中に観てもらえる
柳楽:僕が通う道場の先生も師匠と言えるかもしれないですね。もう10年以上、自分を鍛えるために武道を習っているのですが、僕にとって厳しい言葉をかけてくださる方なのですごく影響を受けていると感じます。
――14歳で映画デビューし、現在31歳。昨年は、撮影こそ少なかったと言うが、今年1年で主演映画「ターコイズの空の下で」「HOKUSAI」「太陽の子」が公開され、放送中の主演ドラマ「二月の勝者」では、カリスマ塾講師を演じている。さまざまな表現メディアを横断し、活躍を続けている。
いまはNetflixに代表されるように、日本で制作した作品を国内だけで上映するのではなく、世界中の人が観ることができるコンテンツとして届けることができる。それってすごくラッキーだと思うし、そうしたところに参加していくのは面白いな、と感じます。
一昔前までは、「ハリウッド映画に出たら、海外の人にも観ていただける」という感覚があったと思いますが、いまはそこが大きく変わってきているところですよね。そうした作品に参加できるのは、刺激になります。僕は俳優なので、あまり制作のことまでは深く考えられないのですが、芸能界に新しい風が吹いている気はするので、柔軟に向き合っていけたらいいな、と。
■俳優をできていたら
――40、50代になったら、こんな役者になりたい。思い描く姿はあるのだろうか。
柳楽:40代になるまでにはまだ時間がありますけれど、その頃も俳優という仕事をできていたらいいな、という気持ちはあります。
(昭和の大女優である)原節子さんのキャリアが僕は結構好きで。原節子さんも10代前半から役者という仕事を始められていますよね。韓国の俳優ソン・ガンホも好きで、そうしたカッコいい先輩たちの背中を追いかけていきたい。この先どうなっていくかはわからないですけれど、「いい作品に出ていたいな」という気持ちはありますね。
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2021年12月13日号