井藤さんが紹介してくれたのはDBジャパン社発行の『登場人物索引』。日本の児童文学、翻訳ミステリーなど細かくジャンル別に分かれていて、発行元のホームページによると「図書館におけるレファレンス用」の索引として発行されているものだという。ほかにも、美術関係の問い合わせは多く、その中で書道や絵画に押されている落款を調べることもある。その際には落款の写真や使っていた人の人物情報などが掲載されている『日本書画落款大事典』(遊子館)などを使って調べるそうだ。

 また、ネット上には、一般人はあまりなじみのないデータベースも存在する。司書はこうした本や各種事典、インターネット上のデータベースなどを駆使して、利用者が探している本を見つけ出している。

「利用者の方から少しでも多くヒントとなる情報を引き出すことで、この情報があればこの検索ツールが使える、この資料を探すにはあの事典に当たれば良いな、というアイデアがわいてきます。」

 さて、今回の“捜索願い”の結果はどうなったのか。

「国立情報学研究所が提供しているデータベースで、利用者の方から聞き取った情報を入力してみたところ、筑摩書房の『一滴の嵐』(小島小陸著)が見つかりました」

 利用者からの質問の種類は幅広い。どんなジャンルの質問にもある程度対応できるように、井藤さんを始めとした司書たちは普段から浅く広く、様々な知識を収集しようと意識しているという。

「何か質問した時に、その分野について全くわからない人だと、聞いた方も不安になってしまいますよね。書店や普段の生活で目にしたり耳にしたりした本に関する情報も、いつか本を探すときに役に立つかもしれないので、頭の片隅に入れておくようにしています。あとは、やはり司書には本好きが多いので、休みの日に書店に行くことも多いです。職業病と言えるかもしれないですね」

 実は、今回書籍化もされた「覚え違いタイトル集」が始まったのは、図書館でレファレンスサービスがあまり利用されてこなかったという経緯がある。

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