東浩紀/批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役
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 批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が話題だ。デルタ株なみに感染力が高いと言われる。

 この2年の経験を活(い)かしたのか、各国の対応はきわめて迅速だった。新株は先月24日に南アフリカで発見された。WHO(世界保健機関)が命名し警戒を呼びかけたのが26日、欧米ではただちにアフリカ南部からの入国制限が始まり、日本も29日には外国人の新規入国を原則停止することを決定した。

 とはいえ評価は難しい。同株は南アで発見されたが、同国発祥とは限らない。すでに世界中で報告されている。アフリカ南部を標的にした渡航制限に科学的な根拠は乏しく、南アの大統領は新手のアパルトヘイトだと訴えている。実際もし発見が欧米でなされていたら、これほど迅速な制限が可能だっただろうか。医学の傘に隠れた偏見には敏感でありたい。

 経済や社会生活への影響も甚大だ。日本では特に留学生が気の毒だ。日本は外国人の入国に厳しく11月上旬に制限緩和が発表されたばかりだった。その矢先での入国禁止は多くの学生の心を挫(くじ)くものだろう。

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