その声に、誰もがうっとりしてしまう。渋さと甘みのある「いい声」で人気の声優・津田健次郎。NHK連続テレビ小説「エール」に、アニメ「呪術廻戦」。数々の話題作に出演し、声優界を代表する存在となった今も、昔から変わらぬ「まっすぐな夢」を心に秘める。
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──声優の道を歩むことになったきっかけは?
最初に表現の世界に興味を持ったのは、中学生くらいですね。映画を作りたいなって。当時、映画めっちゃ見てたんです。
小学生のころ父の仕事の関係でジャカルタに住んでいたんですけど、意外と日本の映画もやってたのでよく連れていってもらって。日本に帰ってきて、中学の終わりぐらいからは名画座に一人でよく行ってました。
大学ではぷらぷらと過ごしてました。映画は作りたいんだけど、どういう話にしたいのか全然まとまんなくて。それで、とりあえず勉強にもなるしお芝居をやってみようかなと思って、舞台役者を始めた感じです。
1995年、たまたまオーディションを受けてみた、あだち充さん原作のアニメ「H2」で声優デビューしました。当時は、まさか声優の道に進んでいくとは思っていませんでした。
──「この道でいいのか」という迷いはなかった?
あったようなないような(笑)。「お仕事頂けるからやろう」っていう、なりゆきですよね。
生活は厳しかったです。バイトも工場とか飲食とか、片っ端から。接客があまり得意じゃなくて、飲食は向いてなかった。
でもそれより、「何者でもない」ってことが一番しんどかった。お芝居の稽古だけは一生懸命やってたんですけど、発揮する場がないんです。台詞をもらえても一言とか。そんなの楽しいわけがない。好きかどうかっていうレベルじゃ、もはやなくなってましたね。
そんななかでも不思議と、やめようと思ったことはないんです。なんなんでしょうね、芝居をやんなきゃいけない気がしていた。もしかしたら、ほかにもっと楽しい人生があったのかもしれないですけど(笑)。
転機は、30歳あたりでアニメ「遊☆戯☆王」と「テニスの王子様」に出たこと。そこからはようやく、声優として「食える」ようになりました。