◆不摂生の賜物で声質が変わった
──イケメンボイス、通称イケボの持ち主です。どうしたらイケボになれますか?
えー、なんでしょう(笑)。「またまたー」とか言われるんですけど、自分ではイケボだと思ってないんです。それより、聞いたらすぐにわかってもらえる、癖のある声でありがたかったなって。いわゆるイケボ、まっすぐイケボと言いますか、正統派イケボからは外れている気がします。
声質は、芝居を始めてからずいぶん変わりました。昔はもっと高かった。遊戯王の初期のころは、今とは全然違います。不摂生の賜物ですかね。たばことか。ただ、酒焼けしてるのにお酒は飲めないんです。なんで焼けたんだっていう話なんですけど(笑)。
声優も、声が変化していってもいいんじゃないかと思っています。声をキープすることをよしとする考え方もあるんですけど、僕は自然体のほうが好きと言いますか。人生って、顔とか風貌、空気感と同じように、声にも乗るような気がしていて。だから、役者自身の人生が、声を通じてそのキャラクターに投影されるほうが面白いなって。
──映像監督や脚本家など活動の幅を広げるなか、今後の夢は?
いい芝居、したいですね。芝居の達人は遥か遠くにあるので。あとはやっぱり、昔からの夢だった2時間の映画本編を撮りたいです。
好きな映画は、フェリーニという監督の「8 1/2」が、自分のなかでどこか頂点にある感じがしますね。夢と現実と回想がミックスされた抽象画に近い作品です。
でも僕が映画を撮るなら、一足飛びに抽象画に向かっちゃいけないと思っていて。まず写実も含めて具象をしっかりやって、時が来たら抽象に飛んでみたい。今はまだその段階じゃない、その力がない気がします。いずれ行けたらいいですよね。
(構成/本誌・大谷百合絵)
津田健次郎(つだ・けんじろう)/6月11日、大阪府生まれ。声優、俳優。「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」「テニスの王子様」「ゴールデンカムイ」「呪術廻戦」などアニメ作品を中心に出演作多数。昨年はNHK連続テレビ小説「エール」のナレーションを務め、2020年度に最も活躍した声優を称える「声優アワード」主演男優賞を受賞した。現在放送中のドラマ「最愛」に刑事・山尾敦役で出演。
※週刊朝日 2021年12月24日号