スリランカ国籍のウィシュマさんが今春、収容先の名古屋入管で亡くなった。閉ざされた「密室」で、何が起きているのか。AERA 2021年12月20日号は、収容経験者の声を聞いた。
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今も暴行を受けたときの記憶が蘇(よみがえ)る。
「頭をこんな感じで、何人もの人が押さえつけてくる。何回も何回も……」
埼玉県川口市に住む、クルド人男性のフセインさん(40代)は、身ぶり手ぶりでその時の様子を語る。
中東のトルコで生まれ育ったが、迫害と弾圧を逃れ2014年に来日。17年11月、難民申請が却下され、そのまま東京入管(東京都港区)に収容された。
部屋は数人の相部屋で、プライバシーはない。1日7時間ほどの自由時間は各部屋などを行き来できるが、それ以外は施錠される。そんな環境の中、フセインさんは食事が喉を通らなくなり痩せていった。当時、施設内では入管の待遇に抗議するハンガーストライキが広がっていた。フセインさんはハンストに参加しなかったが、参加したと疑われ各ブロックに設置されている「独居房」に入れられた。