「時間がかかっても具体的に伝える。伝わっていなさそうなら、難しい言葉ではなくかみ砕いて話す。その繰り返し。自信に根拠を持たせてあげる作業でした」

「個性」を大切にするからこそ、その言葉への理解についても丁寧に説明した。たとえば、元気キャラ、いやしキャラのように、我々は何かとレッテルを貼ろうとしがちだ。そんなブランディングは時に枷(かせ)にもなる。

「でも、消しても消しても残る、自分では当たり前すぎて気づいていないかもしれない、クセといってもいいものに本当の個性は眠っているんです。そして、個性がない人なんて存在しない」

 試行錯誤して行われたオーディションは、参加者の成長ぶりも話題になった。

■改善できることはある

 本誌のインタビューにSHUNTOは否定されないことに驚き、誰かと比べるのではなく「自分がライバルになった」と語った。それを伝えると、「うれしいねえ!」と笑った。

「誰かが否定できるほど、人の可能性は小さくないんですよ。例えば18歳の若者の考えを、『絶対無理だよ』『絶対違うよ』と否定すること自体が無茶です。18歳の考えのほうが革新的である可能性があるんだから」

 だから、否定はしない。できることをする。

「お互いを認めること。それが人間が人間に対してできる第一歩です。『絶対にダメ』はなくても、改善できることは無数にあるわけですから」

 オーディションを経て築こうとしていたもの、いまも築こうとしているものは、参加者や視聴者たちとの信頼関係だったのかもしれない。

「あなたがここに賭けてみたいと思ってくれたことがおれはうれしい。それを伝えて信頼関係を築いてから、プロになる準備をしていく。それはコミュニケーションとして当然のことだったと思います」

 自分自身もアーティストとして、エンターテインメントの高みを目指す志は変わらない。いま、彼らはチームとしてその先にはるか続く道を歩いている。(ライター・小松香里)

AERA 2022年11月7日号より抜粋