またショートは初披露となる「序奏とロンドカプリチオーソ」。スペイン風のリズム感に特徴のある作品で、バイオリンによる演奏が原曲だが、羽生と交流のあるピアニスト清塚信也が演奏したピアノ版である。ショパンの「バラード第1番」でピアノ曲との相性の良さを示してきた彼がどんな情熱的なロンドを踊るのか、注目だ。
フリーは昨季の「天と地と」を続行。昨季の全日本選手権は4回転ループ、サルコー、トーループの「3種類4本」を成功させ、215・83点の高得点をマークした。昨季、羽生は「4回転アクセルを入れるなら冒頭の1本目」と話しており、その1本目にどんな夢を乗せて跳ぶのか楽しみだ。27歳で迎える3度目の五輪を前に至った境地を見られるだけでも価値がある。
■1位になる練習をする
羽生と日本王者争いを繰り広げるのは、鍵山と宇野。鍵山は今季前半の国内大会で4回転ループに初挑戦したものの決められず、グランプリ2戦は昨季同様に2種類3本の4回転をまとめる作戦で連勝した。しかし4回転を4~6本入れるネイサン・チェン(米国)や羽生、宇野との対決に向けて、守りの姿勢ではいられない。
「世界と戦うには実力がまだ足りません。全日本選手権に向けて4回転ループを入れられるよう確率を高めたいです」(鍵山)
宇野は平昌五輪以降のアップダウンを経て、今季は4回転5本に挑む。NHK杯では290・15点で自己ベストを更新しており、調子は上向きだ。
「難度の高い構成にはリスクはあるけれど、練習していても楽しいです。今は『1位になれたら嬉しいな』ではなく『1位になれる練習をしていこう』という考えに変わりました」(宇野)
女子は、3枠の予想がつかない混戦。
女子の3枠争いは、NHK杯優勝の坂本花織(21)が一歩リードしつつも、トリプルアクセルを習得した樋口新葉(20)はフランス大会3位、休養を経て復調してきた三原舞依(22)もイタリア大会4位と、追い上げる。さらに平昌五輪4位の宮原知子(23)の美しい滑りも健在。全選手の演技が終わるまで切符の行方はわからない。