■やっぱり年300万円

 極め付きは千切りキャベツにシラスや味の素、ゴマ油をかけた「無限キャベツ」。フォロワー数は一気に1万人を超えた。

「発信しているうちに、レシピを求めている人は料理が好きな人ばかりではないということに気づきました。自分とは違い、料理に手間をかけたくない人がたくさんいる。求められているのは少ない時間、限られた材料で、誰が作ってもおいしいレシピ。それを考えるのが楽しい」

 今のリュウジさんは、会社員時代と何も変わっていない。

「好きなことをしていたら、なぜか収入が会社員時代の数十倍になりました。でも法人にしたので、僕の役員報酬はやっぱり年300万円です(笑)」

 リュウジさんが「ここで一つ言ってもいいでしょうか」と背筋を伸ばした。

「今、会社員で自分の好きじゃないことをやってる人、たくさんいますよね。それ、多かれ少なかれ社会のためになっています。好きなことだけしてお金をもらうより、嫌でも働いてるほうがよっぽど偉くないですか? だから自分を下げたり“自分なんか”って思わないでほしい。今、働いているあなた。すでに市場価値はありますから」

 自分の現在の仕事は肯定したうえで、何かを外に向けて発信すること。それが副業の天職に巡り合うために大切。

「自分はこれが大、大、大好きっていうプラスの感情で、世の中に発信してみてほしい」

 そう、リュウジさんが料理のレシピをつぶやいたように。

「自分の好きなことを人に伝えるだけ。今日の朝ごはんの写真とか。甘いものが大、大、大好きなら今日のおやつとか。食べ物の話ばっかりですけど、ゲームでも、ネトフリ(ネットフリックス)の感想でも、発信の内容はなんでもいいんですよ」

(ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2021年12月27日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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