同団体の理事で自身もシングルマザーの西田真弓さんは、クリスマスプロジェクトを始めた理由をこう話す。
「ひとり親家庭で一人息子を育て上げましたが、子育て時代、クリスマスが来るのが本当にいやでした。年末年始は、クリスマスプレゼントやお年玉などお金がかかることが多いでしょう。ひとり親家庭でお金がないのにどうしようって、そのやりくりで頭が痛い毎日でした。必死で働かないと食べていけないから、子どもと過ごす時間もなかなかとれず、毎年、クリスマスなんて来なければいいのに、って思っていました。世間がにぎやかに華やいでいくぶん、切なさが募っていったんです」
その後は仕事がうまく回るようになりお金の心配はいらなくなったという西田さんだが、今つらい思いをしているひとり親家庭のことを思うと、胸に込み上げるものがある。
「ハートフルファミリーを立ち上げてから、ひとり親家庭の悩みにたくさん触れて、クリスマスがつらいのは私だけじゃなかったんだ、と痛感しました。一人一人の困難を具体的に助けることはむずかしいけれど、大変だよね、辛いよね、わかるよ、って気持ちに寄り添ってあげるだけでも救いになるんじゃないか、と。それで、ハートフルファミリーの会員に向けて、クリスマスにサプライズでプレゼントを送ることを思いつきました」
はじめの年は、関東エリアの会員30世帯にサンタの格好をしたスタッフがプレゼントを手渡した。その後、会員が増えていくにつれ、そのやり方だと追いつかなくなった。全国に広がった会員に対応できるよう、3年前から全会員に宅配便でプレゼントを送るという現在のシステムに変更した。
一般社団法人グラミン日本の支援を得て、活動に共感してくれる企業から寄付を募り、配送料はクラウドファンディングで600万円を目標に集め、プレゼントの箱詰め作業はボランティアに手を借りている。
今年の12月中旬も、埼玉県坂戸市にある巨大倉庫は「ひとり親家庭のサンタになろう」という呼びかけで集まったボランティアスタッフの温かな活気で満ちていた。