原:録り直しを何回もしていただけたことは、すごくありがたかったです。ドラマなどでは、自分が納得いかないからといって何度もやらせていただけることはないじゃないですか。今回は納得のいくまでやらせていただけたので、なんて贅沢(ぜいたく)なんだろうと思っていました。

松村:自分から「もう一回ここをやらせてください」という録り直しもあれば、全編録り終わった後に録り直してグレードアップする所もありました。でも、自分が「ウッ!(違うかも)」と思ったところは、監督たちが「ここはやろうね」って大体言ってくれたよね。

原:はい。すごく細かく見てくれているから、とても安心感がありました。

■熱意だけでは作れない

松村:もう少し先まで録ってほしいと思う日も、「今日は終わり。喉や体力的に負担がかかっているから、一旦休憩した方がいい」と言われたことがたくさんありました。実際その通りなんです。新海監督たちがガラスの向こうで聴くと、些細な疲れやズレがわかるらしい。「熱意だけではいいものは作れない」ということがわかりました。僕の健康管理まで新海監督がしてくれるとは思わなかったな。

原:私も「ちょっと喉がかれてきたね」と言われたことが何回もありました。すごいですよね。

松村:僕は今回、原さんのセリフに説得された時が多くありました。例えば、鈴芽が芯のあることを言って、草太がハッとするシーンがちょくちょくあったでしょ。その塩梅は、鈴芽の言ったセリフの強さによって変わったんです。驚きの「ハッ」なのか、説得されたことでの「ハッ」なのか。完全に原さんのお芝居を受けました。

■同じ空間にみんないた

原:うれしいです。鈴芽は気持ちが高ぶるようなシーンが多いですが、私は松村さんのお芝居を聴きながらマイク前で感情を入れてセリフを吐き出した時に、1人で練習していた時とはやっぱり違うなと思いました。草太さんが本当に言っている説得力があるから、自然と涙が目に浮かんでくる瞬間もあったんです。本当に松村様々です!

松村:そんなふうに言ってもらえたら、みんなから変に期待されちゃうよ(笑)。

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