記者会見に登場したRIZINの榊原信行CEO(中央)(撮影/大塚淳史)
記者会見に登場したRIZINの榊原信行CEO(中央)(撮影/大塚淳史)

 会見では、この一戦の実現までにいかに複雑な気持ちを抱えてきたか、武尊が明かした。

「僕が55キロでチャンピオンになった後くらいに、天心選手も55キロでチャンピオンになった。団体は違いますけど、ライバル的な存在だなってずっと思ってきた。ただのライバルじゃなくて、5~6年、(対戦が)実現できなかったことで、いろんなこう……溝が生まれた。最初は(那須川の)存在を恨んだ時期もあったし、でも、今回実現してやっとそう思えるんですけど、天心選手がいたからここまで格闘家としてやってこれたんだなという感謝の気持ちの方が多い」(武尊)

 一方で、那須川は独特の例えで、このカードの実現の難しさを表現した。

「別の世界というか、ディズニーとユニバ(ユニバーサルスタジオ)くらいの世界が2人にはあった。2人とも別の世界で(道を)作ってきたんですけど、ここでやっと交わる」

 主戦場とする団体の違いや体重、ルールなど乗り越える壁が大きかったとはいえ、なぜここまで長引いたのか。格闘技ライターの橋本宗洋氏はこう解説する。

「6年前に那須川選手が武尊選手に対戦を呼びかけた時は、お互い売り出し中の時期。その時の(武尊が所属する)K-1の反応は『ではK-1と契約してK-1に上がってください』というものでした。K-1は独占契約が基本ですから。ですが那須川選手もRISEという主戦場があって、それを捨ててまでK-1と契約するのは当然できない。団体の枠を超えた試合はもちろんありますが、K-1とRISEはライバル団体、しかも武尊選手も那須川選手もエース。あらゆる面で調整することがありすぎました」

 一方で、対戦が実現しない間も2人が圧倒的な強さで勝ち続けてきたことが、結果的に試合を実現できる方向に持っていけたと見る。

「調整が難しい中でお互いの道を進み始めましたが、すごいのは2人とも勝ち続けたことです。那須川選手はキャリア無敗、武尊選手も新生K-1ができて以降は全勝です。お互いの価値が上がり、団体の顔としての存在がどんどん大きくなった。そうなると団体に対して主張できる部分もでてくる。だからこそ、武尊選手は自分から周囲のさまざまな人に相談したし、昨年大みそかにもRIZINの会場に行って那須川選手の試合を観戦、握手するという行動にも出られた。武尊選手はある時期から“みんなが望む試合を必ず実現させる”とファンに公言してきました」

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