イベントなどの入場時にワクチン接種証明書の提示を求めるケースが増えている
イベントなどの入場時にワクチン接種証明書の提示を求めるケースが増えている
この記事の写真をすべて見る

 マイナンバーカードに旧姓を併記していたら、新型コロナウイルスのワクチン接種証明アプリが使えない。冗談みたいなエラーに、ため息が漏れる。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。

【写真】ワクチン接種証明アプリの画面はこちら

*  *  *

 2021年12月20日、新型コロナウイルスワクチンの接種証明アプリが導入された。

 国内用の証明書であればマイナンバーカード、海外用であればマイナンバーカードとパスポートをスマートフォンなどの端末で読み込めば取得できる。記者も早速取得してみたが、1分もかからずに操作は完了した。

 しかし、このアプリには重大な欠点がある。「マイナンバーカードに旧姓併記がある」「パスポートに旧姓・別姓・別名併記がある」「パスポートとマイナンバーカードの氏名表記が異なる」人の場合は、アプリでは証明書が発行できないのだ。

■旧姓併記はごまかし

 この問題について、牧島かれんデジタル相は翌21日の会見で、

「課題は認知している。検証する時間を十分に確保する必要があることからファーストリリースには対応できていない」として、「年明け1月中にはなんとか」と改修のメドを示した。

 それに対し、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長の井田奈穂さんがこう主張する。

「今回の一件は氷山の一角。旧姓使用、旧姓併記は無駄なコストをかけたごまかしの施策です」

 結婚した女性のなかには、改姓を強いられたため、職場などで旧姓の「通称使用」をせざるを得ない人たちがいる。一方で保守派には、通称使用が広がれば夫婦別姓にする必要はないとする主張が目立つ。実際、19年11月にはマイナンバーカードと住民票での旧姓併記がスタートし、このためのシステム改修に175億円が投じられた。

 IT大手のサイボウズ社長で、夫婦別姓を求めて裁判を起こした経験を持つ青野慶久さんは「こういうことが起きるだろうと予想していた」と言う。

 旧姓併記という新しいルールを普及させるには、当然システムもそれに対応させなければいけない。今まで作られたシステムも新しく作るシステムも、プラスアルファの工数が発生する。

次のページ