10月25日の河野太郎デジタル相のツイートに大きな反響があった。
「この通知にもあるように、交通違反をした時の切符の押印または拇印は任意で、違反者の義務ではありません。」という短いものだ。そこには令和3年の警察庁から各都道府県警本部長などに宛てた通達の写真が貼り付けられていた。
その通達を読むと、確かに、交通違反をして反則切符を切られるとき、供述書と呼ばれる欄に署名だけでなく「押印または指印(指の指紋を書類に残すこと)」を求められるが、この押印指印は義務ではないと書いてある。
河野氏が規制改革担当相だった時のいわゆる「ハンコ撲滅」改革で、署名があればハンコなどいらないだろうということで非常に多くの行政手続きでハンコ廃止が実現された。
ただ、現場まで浸透するには時間がかかる。この通達は、現場に徹底するためと称して警察庁から発出されたものだ。河野氏周辺に確認したところ、河野氏はこのことを広く国民に知らせて、ハンコと指印廃止の実効性をさらに高めようと考えたようだ。
しかし、よく考えると、この通達は非常におかしいということに気付く。なぜなら、ハンコも指印も必要ないのなら、警察庁が出す通達には、現場では押印指印を求めるなと書くべきだからだ。
普通の人は、運転するときに印鑑など持ち歩かない。交通違反で警察官に止められて、反則切符を切られるときに印鑑の代わりに指印を押すことを求められれば、これは義務なのだと勘違いして応じる人が大半だろう。
現に、ツイッターでは、義務だと思って指印を押してしまったという声が多数上がっていた。また、これを拒否しようとすると警察官による様々な脅し、威圧などで抵抗することができなくなり、半ば強制的に押させられたという訴えも多数上げられた。私の周辺の知人などに聞くと、ほぼ同様の経験をしている人が複数いた。そうした慣行がかなり広範に残っているのは、ほぼ間違いなさそうだ。