ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「男闘呼組」について。
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29年ぶりに再結成した男闘呼組のライブに行きました。私にとって初めての生・男闘呼組でしたが、会場を埋め尽くす往年の女性ファンたちの歓喜と熱気は想像以上に凄まじく、所謂「カラダは憶えている」とはまさにこれかと感心した次第です。
80年代90年代に活躍したアーティストの復活やグループの再結成は、今やさほど珍しくなくなり、私もいろいろなライブを観てきましたが、たいていの場合は「当時の自分に戻った気分になれる」というのが最たる醍醐味です。しかし今回の男闘呼組は、まるで映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のように、過去の自分が突然タイムマシンで未来に連れて来られた、そんな感覚にさせられました。
私が熱心に男闘呼組を観聴きしていたのは、中学から高校にかけての時代。実に30年以上前になります。では何故に「過去」ではなく「未来」に連れて来られた感じがしたのか。ひとつ理由として挙げるとすれば、その「終わり方」が関係しているのではないでしょうか。彼らは何の前触れもなく活動を停止し解散状態となりました。ラストステージなどもちろんありませんでしたし、徐々にフェードアウトしていったわけでもない。前日までテレビや舞台出演をしていたのに、朝起きたら忽然といなくなっていたのです。この「時間の止まり方」はあまりにも唐突で非情で、故にその後のメンバー各々の活動を見ていても、正直どこか大事なものを「なかったこと」にされている感が拭えなかったのは事実です。
無論、岡本健一さんはジャニーズに在籍しながらも独自の存在感を築き、高橋和也さんは粛々と俳優としてのキャリアを重ね、前田耕陽さんもまたテレビや舞台で立派に活躍しています。一方で、グループ随一のカリスマ的人気を誇った成田昭次さんは、ソロやインディーズバンドを経て、長らく表舞台から姿を消していました。それもあって、ほとんどのファンは「男闘呼組」というものに対するけりやあきらめを付けられないまま29年もの月日を過ごしてきたのです。