田原さんも嵐山さんと同じように「若い世代に煙たがられてもいい」と話す。番組では時に声を荒らげて相手を批判することもあるが、それは貫き続けようとする信条があるからだ。
「相手の年齢に関わらず、大事にしているのは面と向かって本音でぶつかっていくということ。ここ最近の首相にだって、もう年下しかいないけど、その姿勢は貫いています。最初のうちは煙たがられますよ。でも、本音をぶつけていけば、必ず相手の心が開くから。これは一般社会でも同じだと思う」
30代後半の記者は田原さんの本誌連載「ギロン堂」を担当しているが、半世紀も年が離れた記者に対しても、対等に、謙虚に接してくれるし、時には「それは違う!」と、番組での司会ぶりさながらに叱られる。
「互いの信頼が人間関係は大事だから、遠慮はしません。不細工であってもなりふり構わずに、正直に人と付き合いたいんだね」
今年の4月で89歳になる。体は若いときと同じようには動かない。体力も落ちた。それでも田原さんは朗らかだ。
「耳は遠くなって補聴器をつけているし、気が短くなったよね。自覚はしているし、気をつけているつもりだけど、娘には毎日怒られていますよ(笑)」
そう言って屈託なく笑うのだった。
戦後を生きてきたたくましい父親も家に帰れば今では家族に叱られる。これは男性の“あるある”かもしれない。
歌手の加藤登紀子さん(79)の言葉は明るく軽やかだ。
「今こそ私たちの世代がもっと楽しそうに生きなきゃだめ。戦後七十数年の平和な時代を生きてきたんだから」
昨年末、今を生きる人々へ、「今、目の前の『ちょっといいこと』に感動しましょう!」というメッセージを込めた『百万本のバラ物語』(光文社)を出版した。
加藤さんは1943年生まれ。物心がつくころには、戦争を経験した上の世代が激しく道を拓いてくれて、加藤さんはその道をのびのびと歩いてくることができたという。
「私たちの世代は、60年安保で闘った人もサラリーマンになって、多くの人が大きな企業に入って仕事をしてきた。それからの半世紀がこの結果でしょ。やっぱり『敗北感』がありますよね」