全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年10月31日号には首都高パトロール みなとみらい交通管理部の松澤梢さんが登場した。
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首都高速道路のパトロール隊で2022年、初の女性隊員となった。四輪駆動車に乗り、1回の勤務で距離にして200キロから300キロを見回る。
「車の運転が大好きで休日もドライブに行きます」。趣味で大型免許を取るほど車好き。入社の動機は「首都高速道路を利用した際に、事故処理をしていたパトロール隊員が格好良かったから」だ。
しかし、憧れた仕事は、時速80キロの車が行き交う中での業務で、いつも危険と隣り合わせだ。
「一瞬でも気を抜くことができない」
だから、業務後に先輩からアドバイスをもらうなど、日々の努力を怠らない。
「同じ現象の事故が起こることは絶対にないので、経験を積み重ね、感覚を身につけることがとても大事なんです」
大きな失敗をしたことがある。カラーコーンの配置間隔を取りすぎたため、規制線を越えて車が進入してきたのだ。たった一つの間違いが、渋滞や事故を引き起こす原因になりかねない。
渋滞時、減速を促すカラーコーンの配置の仕方は、すぐに身に付くものではない。長年の現場経験を積んでから、ようやくできるようになるという。
管制室から事故情報を受け、現場に向かう時には些細なことも確認し、分からないことがあれば、理解するまで質問を繰り返す。事故処理時には、コンビを組んだパートナーと解決方法を話し合ってから行動する。
社には▽車に背を向けない▽相手の安全に気を配る▽自分の身は自分で守る、という独自の安全三原則がある。「徹底して社則を守り、コミュニケーションを取る。模範となる運転をすることを自分に課しています」。これらができてこそ、はじめてお客さまの命を守ることができるのだ。
4年間の管制室勤務を経て、念願のパトロール隊に配属された。「育児休暇を取っても、戻ってこいと言われるパトロール隊員になること」が目標だ。
今日も黄色のパトロールカーに乗り、首都高速道路の安全を守る。
制服に常にメモ帳をしのばせ、現場で聞く先輩の一言を逃さず書き留める。ぎっしりと書き込まれたメモ帳は3冊目が終わろうとしている。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2022年10月31日号