「Googleの栄華は永遠ではない」
人々のリクエストに柔軟に応えるChatGPTは、これまでインターネットの「入り口」として機能してきたGoogleにとって脅威となる可能性が高い。
昨今では時短が重視され、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という造語まで誕生している。ショート動画が好まれ、ドラマも倍速で視聴する時代だ。端的に簡潔な答えが返ってくるサービスへの需要は高い。
革新的なChatGPTを前に、Googleは危機感をあらわにしている。ニューヨーク・タイムズは、次のように報じている。
「ChatGPTにまだ多くの改良の余地があるとはいえ、同サービスの公開により、Googleの経営陣は『コード・レッド(非常事態)』を宣言することになった」
「一部には、事業を根底からひっくり返しかねない大規模な技術革新の到来という、シリコンバレー最大の企業である同社が畏怖している瞬間が近づいているのではないかと危惧する声さえある」
米ワシントン大学でシリコンバレー史を研究するマーガレット・オマラ教授は、同紙に対し、Googleの栄華は永遠ではないと警鐘を鳴らしている。「無敵の企業などありません。すべてが脆(もろ)いのです」。
GoogleもAIチャットボットを開発していたが…
同紙が入手した音声メモによると、Googleのサンダー・ピチャイCEOは社内の複数のAI戦略会議に出席。ChatGPTへの脅威に対応すべく、社内の数多くの開発グループの任務を根本的に変更したという。
目的の検索結果を端的に示せないという弱みについては、Google側も以前から認識しており対策を取ってきた。検索内容によっては、画面のトップに「強調スニペット」と呼ばれる機能を表示している。
これは、最も関連性が高いと思われるウェブサイトの一部を、抜粋して強調表示する機能だ。的確な答えが得られることがある一方、込み入った質問では機能しないことも多い。
皮肉なことにGoogle自身、OpenAIに協力している数多くの企業リストに名を連ねている。さらにはGoogle自身も、ChatGPTと類似した対話型AIシステム「LaMDA(ラムダ)」を保有している。
だが、同社のビジネスモデル上、チャットAIの積極展開には二の足を踏んでいる。すでに一大企業となった同社としては、ときおり不正確な回答を述べるAIを展開することには慎重にならざるを得ない。
また、検索結果まで一足で飛べるようになれば、その過程でこれまでユーザーの目に触れていたオンライン広告は表示されず、同社に収益をもたらさなくなってしまう。
ニューヨーク・タイムズ紙は、2021年のGoogleの収益の80%以上がオンライン広告によってもたらされていると述べ、「Googleは、この新技術をオンライン検索に代わる新たな手段として展開することには消極的である可能性がある」と指摘している。
対するOpenAIは、AIの開発を担う非営利研究組織だ。資金調達を容易にするため、下位組織として限定的な営利企業であるOpenAI LPを擁する。