興味をそそる出だしだ。「身を挺しているスパイ」とはいかにも直訳的であるものの、ジャンルならではの緊迫感が漂い、自動生成された文書とはとても思えない。物語の先はどうなるのだろうか。「続きを書いて」と指示すると、ChatGPTは次のように創作を続けた。
ChatGPT:「その任務は、敵国の秘密基地を潜入し、そこで手に入れるとされる極秘文書を盗み出すことだった。男は、基地に近づくにつれ、警戒が厳しくなると感じた。だが、それでも彼は、決して諦めることなく、前に進んでいった。」
前半とあわせても状況に齟齬(そご)がなく、スパイ小説の書き出しとして見事に成立している。このようにChatGPTは、既知の事実について回答するだけでなく、リクエストに応じて適切な創作を行う能力を持っている。
実際に創作に活用している作家もいる。電子書籍リーダーのKindle(キンドル)向けに作品を発表しているある小説家は、米テックメディアのヴァージに対し、自著のミステリ作品のアイデア出しを任せていると語っている。
この作家は、テキサス州の小さな町で起こった超常ミステリという設定をChatGPTに与え、「殺人の被害者が必要。どうやって殺されたのか。容疑者は4人で、なぜ疑われているのか。犯人が誰かも教えて」とリクエストした。
すると、すでに自力で書いた1巻の続編を補完し、2~7巻までのプロット(おおまかな筋書き)を得ることができたという。
ニューヨークの公立小学校では使用禁止に
ファジーな創作だけでなく、より実用的なタスクの助けにもなる。米テックメディアのワイアードは、ChatGPTが人間相手の減額交渉に成功したという事例を報じている。
イギリス系アメリカ人のジョシュ・ブラウダー氏は、法的アドバイスをチャット形式で得られるサービス「DoNotPay」を運営している。この延長として、企業へのチャット問い合わせを自動で行うツールを、ChatGPTを中核として製作した。
氏はこのツールを用い、ケーブルTV企業の米コムキャストのチャット窓口に苦情を申し立てた。ツールはチャット窓口に対し、サービスが一時的に使用不能になっていたことを説明し、さらに払い戻しを受ける権利がある旨の条文を送信した。窓口担当者は、利用料金を年間120ドル(約1万6000円) 相当減額することに応じたという。
あまりに完成度の高い文章を生み出すため、悪用が懸念されているほどだ。
米CNNは1月6日、「奇妙なまでに説得力のある回答」を生み出すChatGPTについて、ニューヨーク市の公立学校での使用が禁じられたと報じている。
当局は、生徒が課題を短絡的に仕上げるおそれがあり、問題解決的思考の育成を妨げる懸念があると説明している。