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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、大晦日の裏番組の変化について。

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 大晦日のテレビ。「NHK紅白歌合戦」以外はすべて「裏番組」扱いをされるという奇妙な構図が出来上がって60余年。一方で2000年代以降は、プロレス・ボクシング・総合格闘技などの試合中継が、「紅白」とは別軸で大晦日のテレビ風物詩としての成長を遂げてきました。

 しかし、2年前にはTBSがボクシング中継の時間をずらし、ついに今年はフジテレビも総合格闘技「RIZIN」の大晦日中継をしないとのこと。これにより「紅白の裏」からリングの光景が消滅します。

 先の「武尊vs.天心」や「朝倉未来vs.メイウェザー」然り、格闘技系のコンテンツは、その放映形態を地上波からPPV(有料配信放送)やネット系メディアへと次々に移行させています。興行を打つ側・放送する側・視聴観戦する側各々の事情が複雑に絡み合っているまさに過渡期。落ち着くまでにはまだ少し時間がかかるでしょう。

「武尊vs.天心」の試合をフジテレビが放送しないと決定した際、「格闘技に夢を持っている子供たちも有料配信で観ろというのか?」と異論をぶち上げた選手がいましたが、此度のフジテレビによる「大晦日RIZIN中継撤退」の報に際しても、かなりご立腹の視聴者方がいる様子。

 どこぞのネット記事だったか忘れましたが、その中に聞き捨てならない痺れる文言を見つけました。おそらくどなたかのツイートか何かだと思われますが、「今から子供にRIZIN見れないこと、伝えます。地上波しか見れない人もいるんです。俺はフジテレビを絶対に許さない」と。子供想いの頼もしい父親の怒りと無念さが伝わってくる「つぶやき」です。今にも声が聞こえてきそう。そして臭い。

 父「今年の大晦日はテレビでRIZINが観られないそうだ」→子「えっ? 嘘でしょ? あんなに楽しみにしてたのに! そんなのやだよぉ(泣)」→父「ごめんな。パパには何の力もないんだ。ごめんな」→子「やだよぉ! RIZIN観たいよぉ! パパなんか嫌いだぁ!」→父「ごめんな! ごめんな!」→「俺はフジテレビを絶対に許さない!」。我が家にはいなかった父親像だけに新鮮です。

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