「事故に遭おうと思って仕事をしている人はいません。仕事に慣れ、気が緩んでいる時が危ない。これはどんな人にも、どんな職場にも当てはまります」
入社以来40年以上、工場で機械の速度や力加減を制御する仕事に携わってきた。62歳で退職したが、豊富な経験と専門知識を生かして、若手に事故の怖さを教えてほしいと声がかかった。半年のつもりだったが、今年で7年目に入った。
「私でいいのかなと思いますが、長年培ったものを若手に伝えられるのは幸せです」
事故の怖さを正しく理解、体感してもらえるように、布製の腕なども手作りした。研修は高所からの転落や感電など実際に起きたものばかりで、最近はVRでの体験もできるようになった。
「大切なのは何度も何度も研修を受けることです。研修を受けた時のショックは時間とともに薄れる。そのときが一番危険なんです」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2022年10月24日号