この時期になるとその荘厳な姿が秋の紅葉に囲まれる「大仏」。全国各地に建てられているが、意外と知らないことも多いのでは。そんな大仏の豆知識を紹介する。
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多くの大仏は、その地域にとって自慢のタネだ。そのため奈良や鎌倉に次ぐ「日本三大仏」を名乗ったり、そう呼ばれたりする大仏は、実は複数ある。高岡大仏のほか、能福寺の「兵庫大仏」(神戸市兵庫区)や、正法寺の「岐阜大仏」(岐阜市)などだ。
今の兵庫大仏は1991年に再建されたものだが、先代は明治期の1891年に建てられ、兵庫港に寄港する国内外の船乗りたちの目印として、当時から全国に知られた存在だったという。一方、岐阜大仏は高さ13.6メートルで、漆や粘土を使って木や紙などを張り合わせて作る乾漆像としては日本で最も大きい。
いずれ劣らぬ立派な大仏だ。「どこも自慢の大仏様で、それぞれがどう呼んでもよろしいのではないでしょうか。私たちも気にしていません」(能福寺)。外野が順位づけをするのは、野暮(やぼ)なことなのかもしれない。
「大仏写真家」として『夢みる巨大仏 東日本の大仏たち』(書肆侃侃房[しょしかんかんぼう])などの著書がある半田カメラさんが「ユニークな大仏」として挙げたのは、「布袋の大仏」(愛知県江南市)、ハニベ巌窟院の「ハニベ大仏」(石川県小松市)、「万治の石仏」(長野県下諏訪町)。
布袋の大仏は、鍼灸(しんきゅう)院を営む個人が5年をかけて自作したという。住宅地の中にあり、裏手には、鍼灸院の建物とつながる通路も見える。表情も愛嬌がある。制作者は亡くなってしまったが、今はご子息が後を継ぎ、大仏も建物も守っている。
ハニベ大仏は、肩から上の姿しかなく、今も制作途中とされる。しかし、それだけでも高さは15メートルもあり、かえってインパクトを与える。
首都東京にも、実は多くの大仏様がある。
このうち2018年にできたのが、日の出町にある寳光寺という寺の「鹿野大佛(ろくやだいぶつ)」だ。黒みがかった青銅製で、台座を合わせた高さは18メートル、仏様そのものの高さは12メートルと、鎌倉大仏(11.3メートル)より大きい。山形市内の鋳造業者が1千年前の伝統的な技術を使って建てたという。