「僕は、マリニン選手のほうが僕より素晴らしい演技だったと思います。マリニン選手はこれからどんどん演技構成点も伸びていくし、この1、2年で圧倒的な存在になる。ライバルと言われるマリニン選手に置いていかれないようにしよう、というメンタルがプラスになります」
ライバルの存在がお互いを刺激し、スケート界全体のレベルが上がっていく。ここから4年間の新たな戦いを予感させる生暖かい空気が会場を包んでいた。
一方、女子はこれまでの4年とは違う勢力図を描くシーズンが始まった。国際スケート連盟はウクライナに侵攻したロシアの選手の参加を認めておらず、4回転を武器にしてきたロシア女子は不在。確実なジャンプ、滑りの質、演技力といったトータル力が改めて問われることになる。すると世界女王の坂本花織(22)は、スピード感とダイナミックさを武器にしたプログラムをパーフェクトに演じ、笑顔を見せた。146.66点で9月の初戦より14点以上伸ばし、貫禄の首位に立った。
「この演技をできたのは奇跡です。練習では調子が悪く、集中すればここまでできるんだという発見ができたことが良かったです。自己ベストに近づけるよう調子を上げていきたいです」
■全日本選手権に焦点
右足首のけがから復帰した紀平梨花(20)は、まだ3回転2種類に抑え、113.44点でのスロースタート。けがが完治していないこともあり12月の全日本選手権に焦点を当てる。
「練習量はすごく控えていますが、ジャンプの感覚は良くなってきました。健康を大切に、でも期待に応えられるように頑張っていきたいです」
選手たちはこの一戦を糧に、10月下旬からのグランプリ(GP)シリーズに挑んでいく。
(ライター・野口美恵)
※AERA 2022年10月24日号より抜粋