「東大は不合格者に対して、合格までどのくらい足りなかったかのランクを教えてくれるんです。僕は不合格者の中で真ん中くらいのランクでした。夏の時点で東大合格の圏外も圏外で、予備校や塾に通っていなかったので、あと1年あれば行けるんじゃないかと、逆に勇気づけられました」
浪人させてほしい、予備校にも少し通わせてほしいと頼み込むと、両親は借金をして費用をかき集めてくれ、足りない分は祖母が工面してくれた。ただ、生活費は自分で稼ぐしかない。
「毎日の食費に予備校までの交通費を稼ぐために、週3日、ドラッグストアでアルバイトをしました。朝から夕方まで8時間働いて、終わったら予備校に行くというような生活でした」
周囲の受験生に比べれば、勉強に充てる時間は圧倒的に少ない。母の病室で看病の合間に勉強することもあった。このハンデをどう克服するか。そこで考え出したのが、無駄を省く勉強法だ。
「自分に合わないと思った参考書や勉強法はすぐやめました。どんなに評判がよくても、自分の身にならなければ効率が悪い。実践して取捨選択を繰り返していきました。そして、満点を目指すのではなく、合格ラインの少し上を目指しました」
短い時間でいかに効率よく学力を向上させるか。ハンデと捉えられそうなアルバイトも、勉強時の集中力の維持という意味で息抜きになった。
1浪の末、見事合格をつかみ取った布施川さんは、同じような境遇にある受験生にこうエールを送る。
「あきらめないことが一番大事です。『自分はだめそうだ』と周囲は勝手に折れていきます。自分を見限ることなく、信じ続けなければ勉強に身も入りませんから」
一方で、塾や予備校に行くのもままならないという学生もいるだろう。それでも学びたい、という学生を支援する取り組みもある。無料塾だ。
■学ぶ意思を尊重 無料の学習支援
NPO法人「八王子つばめ塾」(東京)は現役大学生や社会人がボランティアで講師を務める無料塾。1~2週間に1度、各科目の個別指導をしている。運営費は企業や個人からの支援や寄付などで賄っている。理事長の小宮位之(たかゆき)さんはこう語る。