写真公開の狙いは、王室へのライバル意識からと言われている。「あなた方にできることは、私たちにもできる」との表明だと王室評論家はコメント。「私たちのことを忘れてはいけないとのアピール」との声もある。
ただ、ハリー王子が年末の発売に向けて準備していた回顧録は、大幅な修正を行うため来年に延期したいと出版社に申し入れたという。夫妻が主人公のネットフリックスのドキュメンタリー番組も、来年末の公開にしてほしいと頼み込んでいる模様だ。いずれも、新国王夫妻と皇太子夫妻に対する批判を削除したいからだと目されている。
両社は王子側と高額の契約を結んでいるために、すんなりと事が進むかはわからない。とりわけネットフリックスは、英王室を扱った人気シリーズ「ザ・クラウン」のシーズン5を11月に公開することから、年内にはドキュメンタリー番組も公開したい考えだ。
だが、本も番組も王室批判を含む内容のままだと、王子夫妻は決定的な打撃を受けてしまう。というのも、長男のアーチー君(3)と長女のリリベットちゃん(1)に、それぞれプリンスとプリンセスの称号を授かりたいからだ。称号がなければ警備の面で大きな差が出る。授与の可否は本や番組の内容で判断するとされており、王室へのライバル心をたぎらせておきながら、この問題では神経質にならざるをえないのだ。
家族を結びつけるのに腐心した心優しい祖母はもういない。王族メンバーのスリム化を目指す国王に迷いはない。2人には、王室批判をしないで米国で暮らしてほしいとのメッセージでもある。
新国王の戴冠式は、来年5月6日と決まった。
「ゴールデン・オーブ(金の宝珠)作戦」として、すでに計画は進んでいる。国王は1953年の女王の戴冠式と比べて予算を抑え参列者は4分の1の2千人とし、3時間だったのを1時間余りと短縮したい。
しかし、英国を世界にアピールするまたとない機会を失うべきではないとする歴史学者などからの反対意見も出ている。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※週刊朝日 2022年10月28日号