また、北朝鮮はロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルに似たKN23(射程約600キロ)の発射を繰り返している。元海上自衛隊海将補で徳島文理大人間生活学部の高橋孝途教授(国際政治・安全保障論)は「短期間に大量のミサイルを発射しているから、単純な開発段階とは言えない」と語る。
■全て撃墜は厳しい
北朝鮮は早朝や深夜など状況を変えたり、連続発射をしたりもしている。高橋氏は「実戦配備し、北朝鮮が持つ作戦計画に組み込む最終段階として、海自の運用試験にあたるテストを行っているという印象だ。2ケタの保有数とそれなりの生産能力がありそうだ」とも指摘する。
高橋氏によれば、「火星12」のような変則軌道を取らない弾道ミサイルなら、海自の最新鋭イージス艦「まや」に搭載されているSM3ブロック2Aで迎撃できる。ただ、火星12でも高高度に撃つ、ロフテッド軌道の場合は迎撃が難しくなる。
さらに、KN23のような変則軌道を取る弾道ミサイルの迎撃は難しく、これが同時に多数飛来すれば、さらに厳しさを増す。高橋氏は「北朝鮮は様々な種類の弾道ミサイルに加え、巡航ミサイルもある。単純なミサイル防衛では、全て撃墜することは厳しい」と語る。
防衛省は来年度予算の概算要求で、「イージス・システム搭載艦」の導入を掲げた。高橋氏は「迎撃力による防衛(拒否的抑止力)に限界がある場合、新しい技術を生み出すまで、別の方法で防衛するしかない」と語り、年末に改定を予定する国家安全保障戦略で議論になっている反撃力の導入も避けられないとみる。高橋氏は「同盟国や友好国との関係強化も必要。相手に誤解を生じさせないため、相手との意思疎通も必要になる」とも指摘する。
第2の問題は、国際情勢の変化だ。
10月5日に行われた国連安全保障理事会では、米国などが北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射を非難する共同声明の採択を目指したが、中国とロシアの反対で実現しなかった。
北朝鮮は今年前半にも核実験を行う準備を進めたが、5月ごろに突然動きが止まった。中国は当時、友好関係にある第三国に対し、「北朝鮮に実験中止を申し入れた」と説明していたという。ただ、北朝鮮が再び、核実験に向けた動きを再開した状況から、この申し入れは「習近平国家主席の第3期体制が決まる10月の共産党大会前の実験は認めない」という内容だった可能性がある。