フィギュアスケートでプロスケーターとしてスタートを切った羽生結弦。その演技だけでなく、会見やインタビューで話す言葉が、聞く人の心をとらえてきた。朝日新聞のフィギュア担当記者として取材を続けてきた記者が、心に残った10の言葉を選んだ。AERA 2022年10月10-17日合併号から。
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2011年3月11日に起きた東日本大震災。羽生は仙台での練習中に被災した。その後は折につけ被災地への言葉を口にしてきた。
「被災地が元の姿を取り戻せるように精いっぱい努力していくので、皆さんも力添えをよろしくお願いします」(2011年4月 神戸での東日本大震災チャリティー演技会で)
演技だけではなく、言葉への思いも強かった。
「取材で話をするので課題が明確に言葉になる。また練習とか試合につながるんです」(2013年10月 グランプリ(GP)シリーズスケートカナダで)
「本当に何も言葉が見つからないですね。自分の日本語力のなさを痛感しています。金メダルを感じると何も話せなくなっちゃう」(2014年2月 ソチ五輪の表彰式で)
時に、哲学者のような言葉で、私たちの心を捉えた。
「壁の先には、壁しかない。人間は欲深いから、それを越えようとする」(2014年12月 全日本選手権の3連覇後)
子どもたちにも言葉を残した。
「いっぱい転んでも全然オッケー。たくさん失敗しよう。そして失敗しない工夫をしよう」(2017年8月 スケート教室で子どもたちに)
言葉で、自分を追い込んだ。限界を超えてひたすら努力する姿に私たちは魅了された。
「逆境は嫌いじゃない。弱いというのは強くなる可能性がある」(2018年2月 五輪連覇を達成した平昌五輪の演技前)
「『負け』には、『負け』という意味しかない。自分にとって『負け』は『死』も同然。本当に、本当に勝ちたいです」(2019年3月 世界選手権で銀メダル)