9月28日に行われた第5回「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の様子(YouTubeから)
9月28日に行われた第5回「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の様子(YouTubeから)

 フランス国内でも賛否が割れている反セクト法を、日本の専門家たちはどう評価しているのか。旧統一教会の宣教活動を社会学的調査に基づいて研究してきた北海道大の櫻井義秀教授(宗教社会学)はこう解説する。

「反セクト法を日本に取り入れるとしても、政府がカルトを許さないという罰則なしの理念法にとどまるのでは。カルトの定義は難しい。実際にフランスでも同法を適用して解散させた団体はありません。セクトの指標とする10項目に関しても、誰が評価するのか考えたときに、文化庁宗務課の十数人の職員で調査できるとは思えません」

 日本の宗教法人法にも、問題のある宗教団体から法人格を剥奪する解散命令があり、「法令に違反し、著しく公共の福祉を害する行為」をした宗教法人は、文部科学省の請求によって裁判所が解散を命じることができる。

 だが休眠状態の法人を除けば、この解散命令が出されたのは「オウム真理教」と、霊視商法による詐欺罪で有罪となった「明覚寺」の2例だけ。9月26日に野党が開いたヒアリングでも、文化庁の宗務課長は「裁判所が命令を出す基準に照らすと、教会の役職員が逮捕や立件、処罰された例がなければ請求は難しく、慎重に考えなければならない」との認識を示した。

 日本で反セクト法のような法律の導入が難しいとすれば、どんな方法で対処していけばいいのか。

 前出の消費者庁による検討会の委員で、18年の消費者契約法の改正に携わった菅野志桜里氏はこう説明する。

「フランスの反セクト法は、無知や脆弱性につけこむ加害行為を犯罪化するという点に特徴があります。このうち『無知や脆弱性につけこむ』という要件の部分は参考になりますし、現行法に取り込むことが可能です。一方、犯罪化するという効果は現状では極端なので、むしろ契約の取り消しや法人格・税優遇などの剥奪に結び付けるべきでしょう」

■寄付や献金にもルールづくりを

 菅野氏は、カルト的な団体による金銭的搾取を取り締まるうえで、三つの論点があると説明する。

 第一に、霊感商法対策という点では、18年の消費者契約法改正で盛り込まれた取消権がある。消費者が確実に不利益を回避できると言われて霊感商法などで消費者契約を結んだ場合、契約を取り消すことができる権利だ。しかし、これまでこの権利を使って霊感商法の被害者が契約を取り消した裁判例が見当たらず、より包括的な形で要件を広げる法改正の必要があるという。

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