春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「国葬」。

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 英国の国葬の日のはなし。9月19日夜、19時。上野鈴本演芸場の楽屋のテレビで、エリザベス女王の国葬の生中継が始まった。

 私は11日から20日まで『一之輔、長月、長講』と銘打ってトリをとっていた。ちょいと長くて、滅多にやらない噺を中心に口演する演目を事前告知。いわゆる「ネタ出し」をすると、いつもよりお客さんの入りも良い。お客が入るということは、それが今のお客さんのニーズということか(ニーズを超える芸があればネタ出し無しでもお客は来るんだろうが)。でも芸人としてはコレはちょっと考えもので、ネタ出しはどうも「本来の寄席」っぽくない。たまたま行ったらこんな噺を聴けたよ!というバクチ感が寄席の醍醐味。トリの噺家が枕から本題に入った時の客席の高揚感も捨てがたい。今回は中入り休憩後は半額になる「幕見券」も取り入れた。これも仕事帰りのお客さんにはハマったようだ。集客の為にはいろいろ変えていかねばならないんだな。

 19日は『子別れ』。上中下からなる長い噺。普段は下のみの口演が多いが、今回は長講ということで中と下を続けてやることに。楽屋で噺を軽くさらう。枕で「弔いが山谷と聞いて親爺行き」という川柳が出てくる。山谷は吉原遊郭のすぐそば、その後の「お楽しみ」を目当てに葬式に向かう男の心理を笑った川柳だ。

『子別れ』の主人公・五郎は伊勢六の隠居さんの葬式のあと、山谷からほど近い吉原に居続け朝帰り。それをきっかけに女房子と別れることになる。その別れの場を描いたのが『子別れ・中』だ。朝帰りを問いただす女房に、酔った勢いで昔馴染みの女郎との再会を惚気る熊さん。怒りのあまり熊の頬を張る女房。激高する熊と女房の間に割って入る近所の者。その仲裁の男と女房の仲を疑う熊。愛想を尽かした女房は別れを切り出し、売り言葉に買い言葉で二人は離縁する。いい厄介払いが出来たと、件の女郎を身請けしてくるがすぐにその女も出ていってしまう……もう、熊さん、最低の最悪。どうしようもない。

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