反骨とエンタメ。彼女と話していてスパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライト・シング』を思い出した。
「光栄! スパイク・リーは大好き。なぜ自分たちはそれが今できないのか。その問いを彼はラジカルに突き詰めた。私は『もう二度と映画を撮れないかもしれない』と思い映画に携わっている。だから自分の思いは100%表現するべきだと思う」
クレバーで可能性を秘めた若い黒人女性が主人公のこの作品では彼女をとりまく性の問題も描かれている。
「ゾラの性もリスペクトを持って描いたつもり。何より主人公と私自身が重なっていた。だから自分が撮るしかなかった。世界中の若い女性に観てほしい。映画の中にも自分の身の置き場があるってわかるはず」
現代社会の理不尽を許さないブラヴォー監督は、強い意志で人々の意識の底にある「差別と偏見」をあぶり出した。
「私は負けない」という強烈な自己。この作品で彼女は今、気鋭の女性黒人映画監督として押しも押されもせぬ存在になっている。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中
※週刊朝日 2022年10月7日号