撮影の合間は、お互いの生活環境の変化や今の暮らしぶりについて話していましたね。引っ越したとか、家を建てたとか、を飼い始めたとか(笑)。さっき「湯川は変わらない」と言いましたが、それぞれが過ごしてきた時間が自然と演技に反映されている部分はやっぱりあると思います。俳優以外の部分で経験してきたことが、結果的に演技に深みや渋みを醸し出すんじゃないかな、みたいなことを3人で話していました。

 お芝居は、個人の性格や経験が役柄に反映されたほうがやっぱり面白いと感じます。観ていて「素の人柄が滲み出ているな」と感じるほうが伝わるものはあります。登場人物の魅力は「本人×役柄」で有機的に生まれる。無意識に本人の人柄が役に滲み出てきた瞬間に、初めてその人がその役を演じる意味が生まれるんじゃないかと。自分を無にして役に徹するというのは、すごいことだけれど、ちょっとカッコ良すぎるなって。自分がそういうアプローチをできないので嫉妬(しっと)も含めて思います(笑)。

(c)2022 フジテレビジョン、アミューズ、文藝春秋、FNS27社
(c)2022 フジテレビジョン、アミューズ、文藝春秋、FNS27社

■人生の旅路の道標に

――柴咲コウとの音楽プロジェクト「KOH+(コウプラス)」も9年ぶりに復活した。

福山:ガリレオシリーズの主題歌は「救済」をテーマにしています。それは今作「ヒトツボシ」でも同じです。歌詞は、物語の起点となる登場人物の心情に立って描きました。家族や友人、今生きている人々は、残酷な最期を遂げた彼女のことを忘れずに思い続けている。それと同時に、彼女が「北極星」のように道標(みちしるべ)となって、残された人々が人生の旅路を間違わないように照らしてほしいという思いを込めました。

 楽曲を聴いた東野先生から「それは盲点でした」と感想をいただいた。「物語は亡くなった人間ではなく、生きている人間を描く。亡くなっている人間は出発点であり、そこを掘っていくのはミステリーの世界ではまずない。映像化するからこそできた試みだなと感心しました」。そう言ってくださったことが印象に残っています。

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