原発回帰で最も心配なのは安全性だ。福島第一原発の事故で335平方キロは今も帰還困難区域となっている。
事故の後始末も困難だ。溶け落ちた核燃料の取り出しでは、建屋全体を水没させる新工法が9月3日に提示された。一部冠水→水没させず空気中で→建物全体水没、と工法さえ定まらず、廃炉は迷走を続けている。「30年後の廃炉」という政府や東電の宣伝を本気で信じている専門家はいないだろう。
東電は事故前に津波のリスクに気づいていた。当時の規制当局(原子力安全・保安院)もそれを知っていながら原発推進の経済産業省に忖度し、きちんと審査していなかったことが裁判で明らかになった。安全を後回しにする巨大組織の体質が今も変わっていないように見えることが、一番恐ろしい。
さらに、軍事攻撃の対象とされると非常にやっかいなことも、ウクライナの原発で世界に暴露された。頻繁にミサイルを発射している北朝鮮に面した日本海側に、10基以上の原子炉を並べることのリスクは小さくない。(ジャーナリスト・添田孝史)
※AERA 2022年9月26日号より抜粋