教団からの返金が終わったのが13年ごろ。その後は就職した妹の収入を頼りにした生活となり、一家はますます苦境に立たされる。そんな中、15年には兄が自殺。棺にすがって泣いたという山上容疑者はその後、母や妹に会わなくなり、一周忌にも姿を見せなかったという。
一部の返金に応じているとはいえ、なぜ旧統一教会は、ここまで崩壊する家庭を生み出してしまったのだろうか。17年まで教団の家庭教育局副局長を務めた櫻井正上氏(48)は言う。
「教団の教義に『献金』はなく、世界各地にある支部を見渡しても、ここまですさまじい金額の献金をしているのは日本くらい。『世界のために生きる美しい国、日本を作ろう』という初期の志が、いつの間にか『世界の活動資金を日本教会が作る』という発想に変わり、献金活動が最優先されるようになった」
■献金することが信仰
櫻井氏は小学校卒業と同時に韓国の教団関連の学校に留学。大学卒業まで約10年間を過ごして日本に戻り、98年に教団で働き始めた。父親は教団の第5代会長を務めた櫻井設雄氏だ。自らも2世である櫻井氏は、
「日本に帰国して、教団が経済(お金集め)体質になっていることに驚いた。組織の指示に従い、献金することが信仰となっていた。その結果、最も犠牲になったのは2世たちです」
と認め、2世には(1)祝福結婚の家庭(2)結婚後にカップルで入信した家庭(3)壮婦(結婚している女性)家庭──の3パターンがあるとして説明する。
「(1)と(2)の子どもたちは教団の『2世部』につながりやすく、相談することもできた。親への指導ができれば、行き過ぎた献金にブレーキがかかる。けれど、(3)の壮婦家庭の場合、子どもたちが2世部につながっていないケースも多く、その声を取りこぼしてきてしまった。山上家はその一例だと思う」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年9月26日号より抜粋
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